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神職の資格を取ったものの、神職として奉仕させてくれる神社がなく、かろうじて巫女でなら雇ってくれる神社を見つけ、そこで4年間奉仕ししていました。
今は普通の仕事をしていますが、当時を振り返り注目度が高い?巫女の実情を嘘偽りなくお話します。
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H先輩が欠勤し始めて既に半月が経過したある日の昼下がり、昼ご飯を食べ終わった神主さんはのんびり新聞を読み、今日は3人しかいない巫女はのんびり手水用の手拭に使う紙を折ったりしていた。
もうきっと今日はこのまま殆ど参拝者も来ないだろうねー、暇だねー、のんびりしようねーとまったりとした空気が流れる中、電話が鳴った。たまたま電話の目の前にいた私が出る。
「はい、×××神社でございます」
「初めまして、Hの母ですが」
「え゛!?」
潰れた蛙のような声を出した私に、社務所にいた何人かが振り返った。
「あ、はい、初めまして、こっこんにちわ~、H先輩にはいつもお世話になってます~」
引きつった笑みを浮かべ、震える声で搾り出した。
「いいえ、こちらこそ。今日これからそちらに行って、宮司さんとお話がしたいんですが宜しいかしら?」
「え………、少々お待ち下さい」
保留にし、とりあえず社務所にいる中でもっともエライ人にふる。平日なので人が少なく、今日の職員で一番エライのは経理課の課長補佐だった。
「すいません、H先輩のお母様からお電話が入ってまして、宮司さんに会いにこれから神社に来たいっていうんですけど」
「はぁ!? え、うそこれから? ど、どうしよう、とりあえず俺が出るわ」
緊迫した空気が流れる。しかし、周囲の下っ端神主及び巫女は野次馬的な盛り上がりを見せていた。
「え、何々Hのおかんが乗り込んでくるの?」
「どーなるんでしょーねー、宮司さん会うのかなー?」
「おい、瑞穂電話どうだったよ? 声とか似てた?」
「よく似てましたよー。お母様と一緒にH先輩も来るのかな………」
「わー、何か楽しくなってきましたねー、しかも祭儀課長(正月に『帰れ!』と怒鳴った人)いないのに。あ、そういえば上層部の先輩巫女も誰もいないですね」
「確信犯じゃねぇの? すげえなあ」
5分ほどの電話の後、青ざめた表情で経理課長が告げた。
「これからHのお母さんが来るぞ。30分くらいで来るらしい。瑞穂、応接室の準備だ。あと宮司さんは外出しているから、戻って来ても会わせない方向で行くからな。みんな宮司さんが戻って来ても『いる』って言うなよ?」
30分後、社務所に向かってくる派手なおばさんがいた。顔を見て分かる。
H先輩のお母さんだ!!
経理課長と人事部の平課員がこっそりと裏に隠れた。巫女3人が強張った笑顔で迎える。
「先ほどお電話致しました、Hの母ですが」
「はい、伺っております。応接室にご案内致します。どうぞこちらへ」
私が応接室へとH母を案内し、お茶を出す。
「少々お待ち下さい」
お盆を持ったまま、課長達を呼ぶ。
「スタンバイOKです。頑張って下さい!!」
「マズイな、相当強そうだったぞ、あの母親………」
「2人がかりじゃ勝てそうになかったっすよねー」
「じゃ、私はこれで」
そそくさと逃げようとする私の手を、がっしりと課長が掴んだ。
「いや、待て。何があるか分からんからお前、横の宮司室に待機してろ。で、宮司さんが戻ってきたら、うっかり鉢合わせしないように見張ってろ、いいな?」
「はい、じゃ何かあったら内線下さい。1時間くらいしたらお茶のおかわりを出すフリして様子見に行きますから」
「ようし、行くぞ!」
「をー」
細長く頼りないコンビが応接室へと消えた。
それから30分程して、外出から戻って来た宮司さんが宮司室に現れた。だいたいの話は社務所で聞いたらしい。
私が淹れたコーヒーを飲みながら、
「何だかすごいことになってるなあ。で、俺は出ない方がいいんだよな?
」
「そうですね、宮司さんが出るのは最終段階ですから、いないフリして下さい。H先輩のお母さんが帰るまではここに隠れていて下さい」
「うん、そうする。そういやHも来てるのか?」
「いいえ、お母様だけでしたよ」
更に30分後、予定通りお茶の交換に行く。
お母様と課長達の計3人分のコーヒーを入れ替えて戻る。様子を知るためにゆっくり目に交換した為、大分話が聞こえた。かさこそと宮司室に戻り、予想外に厄介な話であることを耳に入れた。
「お、瑞穂、隣の様子はどうだった?」
「すんごい揉めてますよ。何か、お母さんがH先輩が寝ている隙に、勝手に先走ってここに来ちゃったみたいです」
「どういうこと?」
「先輩は巫女を辞めたくないみたいなんですけど、お母様はもう辞めて欲しいみたいで、辞めさせて下さいって迫ってますよ」
「なんじゃそりゃ」
「ここで巫女になってから今まで、先輩は何回か休んでますよね? その度に実家に電話していて、毎回ではないけれどお母さんが富山からここまで看病しに来ていたようで。こんなしょっちゅう倒れるような職場に娘は預けられない!って主張しています。だから宮司さんに直に話したいそうです。まだ外出していることにしてますけど」
「………、俺は別に会うのは構わんけど、会ったらもう最後だぞ? 退職決定だぞ? 本人が続けたいって言ってももう無理だからな?」
「ですよねー………」
更に1時間しても、話は纏まらないようだった。
とうとう宮司さんが立ち上がった。
「しょうがない、ちょっと行って来るわ」
「はい、お気をつけて」
「うん」
のそのそと宮司さんが応接室へ消え、更に1時間後、先輩が退職するという方向で話が纏まり、H母は帰って行った。私物は後日取りに来ると言い残して。
応接室を片付ける間、宮司さん以下3名は脱力した様子でソファに座ったままだった。コーヒーカップは下げ、新たに緑茶を3人分淹れて出すと、3人はゴビゴビと飲み干した。
「ああ、疲れた。本当に俺は疲れたよ」
50近い課長がフルマラソンを終えたような表情でぼやく。
「いや~、強力なお母さんでしたねー。大阪出身か!?ってくらいに。ああ、今日の日誌になんて書いたらいいのかなあ。そういや退職願も何も書いてないですね」
平課員は案外平気そうにお茶をすする。
「もう知らん。離職票だけ送っとけ」
今だかつてない事件に、宮司さんも疲れたように答えた。
結局、H先輩の姿を二度と見ることなく、退職は決定した。
翌日、事の次第を聞いた祭儀課長激怒。先輩巫女達は嘆息。
課長はよっぽど腹が立ったらしく、ヒマな時に私を捕まえて色々語りだした。
「あ~!! やっぱりさっさとクビにすりゃ良かったんだ。年末の賞与変返せってんだよあの馬鹿女!! この出勤簿見てみろよ、あいつ3年間で何日欠勤や遅刻したと思う!? 今数えてやるから待ってろよ、え~と、うわ60日くらいあんぞ、ありえねえな。あいつは昔から勝手だったんだよ、今までも『辞めます!』っつたのは1度や2度じゃねえからな。じゃあ辞めてもらおうかっていうと、『続けたいんです!』とか言い出すしよ。やっといなくなるんだな、あーせーせーした!!」
当たり前ですが、相当怒ってました、課長。
先輩達は、これで彼女がらみで怒られなくなるのかとちょっと肩の荷が下りたような顔でした。後輩の不祥事は先輩に行くので、今まで大変だったのでしょう。ここまでスゴイ人もそうそういませんが、おかげで先輩の苦労はかなりのものでした。
やっと解放された感じです。
これで神社に平穏が訪れました。
しかし、退職後にまで更に後日談があったりします。
続く。次で本当に最後のエピソード。
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「いいえ、こちらこそ。今日これからそちらに行って、宮司さんとお話がしたいんですが宜しいかしら?」
「え………、少々お待ち下さい」
保留にし、とりあえず社務所にいる中でもっともエライ人にふる。平日なので人が少なく、今日の職員で一番エライのは経理課の課長補佐だった。
「すいません、H先輩のお母様からお電話が入ってまして、宮司さんに会いにこれから神社に来たいっていうんですけど」
「はぁ!? え、うそこれから? ど、どうしよう、とりあえず俺が出るわ」
緊迫した空気が流れる。しかし、周囲の下っ端神主及び巫女は野次馬的な盛り上がりを見せていた。
「え、何々Hのおかんが乗り込んでくるの?」
「どーなるんでしょーねー、宮司さん会うのかなー?」
「おい、瑞穂電話どうだったよ? 声とか似てた?」
「よく似てましたよー。お母様と一緒にH先輩も来るのかな………」
「わー、何か楽しくなってきましたねー、しかも祭儀課長(正月に『帰れ!』と怒鳴った人)いないのに。あ、そういえば上層部の先輩巫女も誰もいないですね」
「確信犯じゃねぇの? すげえなあ」
5分ほどの電話の後、青ざめた表情で経理課長が告げた。
「これからHのお母さんが来るぞ。30分くらいで来るらしい。瑞穂、応接室の準備だ。あと宮司さんは外出しているから、戻って来ても会わせない方向で行くからな。みんな宮司さんが戻って来ても『いる』って言うなよ?」
30分後、社務所に向かってくる派手なおばさんがいた。顔を見て分かる。
H先輩のお母さんだ!!
経理課長と人事部の平課員がこっそりと裏に隠れた。巫女3人が強張った笑顔で迎える。
「先ほどお電話致しました、Hの母ですが」
「はい、伺っております。応接室にご案内致します。どうぞこちらへ」
私が応接室へとH母を案内し、お茶を出す。
「少々お待ち下さい」
お盆を持ったまま、課長達を呼ぶ。
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「マズイな、相当強そうだったぞ、あの母親………」
「2人がかりじゃ勝てそうになかったっすよねー」
「じゃ、私はこれで」
そそくさと逃げようとする私の手を、がっしりと課長が掴んだ。
「いや、待て。何があるか分からんからお前、横の宮司室に待機してろ。で、宮司さんが戻ってきたら、うっかり鉢合わせしないように見張ってろ、いいな?」
「はい、じゃ何かあったら内線下さい。1時間くらいしたらお茶のおかわりを出すフリして様子見に行きますから」
「ようし、行くぞ!」
「をー」
細長く頼りないコンビが応接室へと消えた。
それから30分程して、外出から戻って来た宮司さんが宮司室に現れた。だいたいの話は社務所で聞いたらしい。
私が淹れたコーヒーを飲みながら、
「何だかすごいことになってるなあ。で、俺は出ない方がいいんだよな?
」
「そうですね、宮司さんが出るのは最終段階ですから、いないフリして下さい。H先輩のお母さんが帰るまではここに隠れていて下さい」
「うん、そうする。そういやHも来てるのか?」
「いいえ、お母様だけでしたよ」
更に30分後、予定通りお茶の交換に行く。
お母様と課長達の計3人分のコーヒーを入れ替えて戻る。様子を知るためにゆっくり目に交換した為、大分話が聞こえた。かさこそと宮司室に戻り、予想外に厄介な話であることを耳に入れた。
「お、瑞穂、隣の様子はどうだった?」
「すんごい揉めてますよ。何か、お母さんがH先輩が寝ている隙に、勝手に先走ってここに来ちゃったみたいです」
「どういうこと?」
「先輩は巫女を辞めたくないみたいなんですけど、お母様はもう辞めて欲しいみたいで、辞めさせて下さいって迫ってますよ」
「なんじゃそりゃ」
「ここで巫女になってから今まで、先輩は何回か休んでますよね? その度に実家に電話していて、毎回ではないけれどお母さんが富山からここまで看病しに来ていたようで。こんなしょっちゅう倒れるような職場に娘は預けられない!って主張しています。だから宮司さんに直に話したいそうです。まだ外出していることにしてますけど」
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とうとう宮司さんが立ち上がった。
「しょうがない、ちょっと行って来るわ」
「はい、お気をつけて」
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応接室を片付ける間、宮司さん以下3名は脱力した様子でソファに座ったままだった。コーヒーカップは下げ、新たに緑茶を3人分淹れて出すと、3人はゴビゴビと飲み干した。
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「いや~、強力なお母さんでしたねー。大阪出身か!?ってくらいに。ああ、今日の日誌になんて書いたらいいのかなあ。そういや退職願も何も書いてないですね」
平課員は案外平気そうにお茶をすする。
「もう知らん。離職票だけ送っとけ」
今だかつてない事件に、宮司さんも疲れたように答えた。
結局、H先輩の姿を二度と見ることなく、退職は決定した。
翌日、事の次第を聞いた祭儀課長激怒。先輩巫女達は嘆息。
課長はよっぽど腹が立ったらしく、ヒマな時に私を捕まえて色々語りだした。
「あ~!! やっぱりさっさとクビにすりゃ良かったんだ。年末の賞与変返せってんだよあの馬鹿女!! この出勤簿見てみろよ、あいつ3年間で何日欠勤や遅刻したと思う!? 今数えてやるから待ってろよ、え~と、うわ60日くらいあんぞ、ありえねえな。あいつは昔から勝手だったんだよ、今までも『辞めます!』っつたのは1度や2度じゃねえからな。じゃあ辞めてもらおうかっていうと、『続けたいんです!』とか言い出すしよ。やっといなくなるんだな、あーせーせーした!!」
当たり前ですが、相当怒ってました、課長。
先輩達は、これで彼女がらみで怒られなくなるのかとちょっと肩の荷が下りたような顔でした。後輩の不祥事は先輩に行くので、今まで大変だったのでしょう。ここまでスゴイ人もそうそういませんが、おかげで先輩の苦労はかなりのものでした。
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巫女をやっていてあの日程胃が痛かった日はないと思う。課長に怒鳴られようが何しようがいちいち気にしなかった(そうでないと身が持たないんですよ)私ですが、直接自分は関係ないものの身が縮む思いでした。
それは1年でもっとも忙しい正月のある日のことだった。巫女がそれぞれの持ち場へと振り分けられいた。受付、案内、祈祷補佐、舞姫、お神酒所、会計所、社務所、授与所………という具合で10人程の巫女が各所へと散らばった。
私はその日お神酒所担当だった。
お神酒用の日本酒の残数を確認した所、今日1日持つか微妙な本数だったので、朝のうちに補充することにした。バイトの巫女ちゃん(毎年kきてくれるベテラン)に留守番を頼み、倉庫へ向かう。
普段なら境内を突っ切って行くほうが早いのだが、正月で混雑しているので社務所を通った方が早い。
まだ朝9時頃だったので社務所はのんびりした空気………のはずだったのだが、玄関を開けた途端に響いてきたのは課長の怒りマックスの怒鳴り声だった。
「もういい! お前帰れ!!」
流石神主さんよく声が通る………なんて感心してる場合じゃないよな。恐る恐る社務所の戸を開けると、血管の浮いた赤い顔に凶眼を光らせた課長の姿。周囲では困惑しつつ凍りついたバイトの巫女さんと、同様に凍りついた社務所係りの神主さんたち。
抜き足差し足中に入ると、社務所係りだったはずのH先輩の姿がない。やっぱり彼女が何かしでかしたのか!?
フピーフピーと鼻息荒い課長がキッと私の顔を睨みながら、
「H帰るから。ほっといていいぞ!」
「え? へぇ!? 帰るってこれからですか? 具合悪いんですか?」
「あいつの頭は昔から具合おかしいんだよ! この忙しいのに社務所係りがイヤなんだとさ。どうしても舞姫か祈祷補助がいいとか抜かしやがった。『駄目なら帰ります!!』とか言いやがったから『帰れ!!』って言ってやったよ。フン、いい年して何考えてるんだろうなあ」
「………じゃあ社務所は誰が?」
「しょうがないから神主だけで何とかするよ。他の場所も空には出来ないからな! あ~っ本当にムカつくなあ新年早々!!」
おいおいこんな事アリかよ? 本気で帰るつもりか? もう今日でさようならの勢いだぞ?
とりあえずお酒を1ケース持ってきてから、先輩がいるであろう更衣室に飛び込む。
「H先輩!?」
「あ、瑞穂さん。私帰るから」
泣きながら言う先輩。
「先輩、落ち着いて下さい。帰ってどうするんですか。こんな忙しい日に帰ったりしたら、もうここには来れなくなっちゃいますよ!? いいんですか?」
「だって、巫女の仕事は舞姫か祈祷でしょ? 何で私が社務所で受付なんてしなくちゃいけないの? 後輩の子達ばっかり舞姫やってるし」
「1年目で社務所とかイレギュラーな事が多い場所は任せられないからですよ。人前で舞う経験を積む為でもありますし、トイレに行くのもままならない程過酷だし。社務所や会計はある程度経験のある人じゃないと」
「私だって舞姫は1回しかしていないのに………ズルイよ」
こっ、この人はもう………!!
ああ、駄目だ私じゃどうにもならん。上層部の先輩召還だ!
お酒のケースをお神酒所に放り込み、まだ混み具合が大したことないことを確認し、バイトちゃんにもうちょっと1人でお願いする。
「何かあったら携帯に掛けて!」
職員用の携帯を掴んで、会計所にいたトップの先輩・Fさんの元へと疾走。ただならぬ気配を感じたらしい先輩が、
「瑞穂、どうした!?」
「かくかくしかじかで、H先輩が課長と一戦やらかして、社務所係りを放棄して帰ろうとしています。今更衣室で着替えています、止めて下さい!」
「うそでしょ!? そんなの聞いたことないってば」
会計所を離れるわけにも行かないF先輩は慌てて内線電話を掛ける。
10分にわたる交渉の末、とうとう彼女を止める事は出来ず、9時27分に帰宅したのだった。
あああああ、今日はみんな21時くらいまで働かなきゃならないというのに、何考えてんだよぉぉぉぉぉ。人手もギリギリだっちゅーのにぃぃいぃぃ。
とりあえず内線でH先輩職場放棄を連絡。巫女達の悲鳴が聞こえた。
ああ、さようならH先輩。もう来ないっつーか来れないですよね………。
お神酒所でお神酒を注ぎつつ、暗澹たる思いに胸中を支配された1日だった。
こんな騒動を起こしたH先輩だったが、翌日はごく普通に出勤して来たことにビックリだった。悪びれた様子は全くなく、むしろ晴れ晴れとした明るい顔で、
「おっはようゴザイマ~ス!!」
と元気よく更衣室に入ってきた。その時の先輩達の表情は、見事に固まっていた。言いたいことは色々あったと思うけど、もう諦観していたのか誰も何も言わなかった、というか言えなかった。
勿論私も何も言えなかった………
よく来れたな………とその神経の太さに感心しただけだった。
まだ続くよ。
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それは1年でもっとも忙しい正月のある日のことだった。巫女がそれぞれの持ち場へと振り分けられいた。受付、案内、祈祷補佐、舞姫、お神酒所、会計所、社務所、授与所………という具合で10人程の巫女が各所へと散らばった。
私はその日お神酒所担当だった。
お神酒用の日本酒の残数を確認した所、今日1日持つか微妙な本数だったので、朝のうちに補充することにした。バイトの巫女ちゃん(毎年kきてくれるベテラン)に留守番を頼み、倉庫へ向かう。
普段なら境内を突っ切って行くほうが早いのだが、正月で混雑しているので社務所を通った方が早い。
まだ朝9時頃だったので社務所はのんびりした空気………のはずだったのだが、玄関を開けた途端に響いてきたのは課長の怒りマックスの怒鳴り声だった。
「もういい! お前帰れ!!」
流石神主さんよく声が通る………なんて感心してる場合じゃないよな。恐る恐る社務所の戸を開けると、血管の浮いた赤い顔に凶眼を光らせた課長の姿。周囲では困惑しつつ凍りついたバイトの巫女さんと、同様に凍りついた社務所係りの神主さんたち。
抜き足差し足中に入ると、社務所係りだったはずのH先輩の姿がない。やっぱり彼女が何かしでかしたのか!?
フピーフピーと鼻息荒い課長がキッと私の顔を睨みながら、
「H帰るから。ほっといていいぞ!」
「え? へぇ!? 帰るってこれからですか? 具合悪いんですか?」
「あいつの頭は昔から具合おかしいんだよ! この忙しいのに社務所係りがイヤなんだとさ。どうしても舞姫か祈祷補助がいいとか抜かしやがった。『駄目なら帰ります!!』とか言いやがったから『帰れ!!』って言ってやったよ。フン、いい年して何考えてるんだろうなあ」
「………じゃあ社務所は誰が?」
「しょうがないから神主だけで何とかするよ。他の場所も空には出来ないからな! あ~っ本当にムカつくなあ新年早々!!」
おいおいこんな事アリかよ? 本気で帰るつもりか? もう今日でさようならの勢いだぞ?
とりあえずお酒を1ケース持ってきてから、先輩がいるであろう更衣室に飛び込む。
「H先輩!?」
「あ、瑞穂さん。私帰るから」
泣きながら言う先輩。
「先輩、落ち着いて下さい。帰ってどうするんですか。こんな忙しい日に帰ったりしたら、もうここには来れなくなっちゃいますよ!? いいんですか?」
「だって、巫女の仕事は舞姫か祈祷でしょ? 何で私が社務所で受付なんてしなくちゃいけないの? 後輩の子達ばっかり舞姫やってるし」
「1年目で社務所とかイレギュラーな事が多い場所は任せられないからですよ。人前で舞う経験を積む為でもありますし、トイレに行くのもままならない程過酷だし。社務所や会計はある程度経験のある人じゃないと」
「私だって舞姫は1回しかしていないのに………ズルイよ」
こっ、この人はもう………!!
ああ、駄目だ私じゃどうにもならん。上層部の先輩召還だ!
お酒のケースをお神酒所に放り込み、まだ混み具合が大したことないことを確認し、バイトちゃんにもうちょっと1人でお願いする。
「何かあったら携帯に掛けて!」
職員用の携帯を掴んで、会計所にいたトップの先輩・Fさんの元へと疾走。ただならぬ気配を感じたらしい先輩が、
「瑞穂、どうした!?」
「かくかくしかじかで、H先輩が課長と一戦やらかして、社務所係りを放棄して帰ろうとしています。今更衣室で着替えています、止めて下さい!」
「うそでしょ!? そんなの聞いたことないってば」
会計所を離れるわけにも行かないF先輩は慌てて内線電話を掛ける。
10分にわたる交渉の末、とうとう彼女を止める事は出来ず、9時27分に帰宅したのだった。
あああああ、今日はみんな21時くらいまで働かなきゃならないというのに、何考えてんだよぉぉぉぉぉ。人手もギリギリだっちゅーのにぃぃいぃぃ。
とりあえず内線でH先輩職場放棄を連絡。巫女達の悲鳴が聞こえた。
ああ、さようならH先輩。もう来ないっつーか来れないですよね………。
お神酒所でお神酒を注ぎつつ、暗澹たる思いに胸中を支配された1日だった。
こんな騒動を起こしたH先輩だったが、翌日はごく普通に出勤して来たことにビックリだった。悪びれた様子は全くなく、むしろ晴れ晴れとした明るい顔で、
「おっはようゴザイマ~ス!!」
と元気よく更衣室に入ってきた。その時の先輩達の表情は、見事に固まっていた。言いたいことは色々あったと思うけど、もう諦観していたのか誰も何も言わなかった、というか言えなかった。
勿論私も何も言えなかった………
よく来れたな………とその神経の太さに感心しただけだった。
まだ続くよ。
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揉めに揉めたものの一応別れたH先輩。
横で見ていても情緒不安定な傾向に拍車がかかりつつあった。H先輩の後輩は私を含めて3人。その3人に対する叱り方がヒステリックの度が過ぎるし、内容的にも八つ当たりにしか思えない。とうとう見るに見かねた普段は何も言わないような神主さんに「Hさん、あの言い方はいくらなんでもないんじゃない? 別に後輩の子が悪いわけじゃないでしょう?」と諌められる程。
それを機にヒステリー説教は収まったものの、今度は人がいないところで妙な言いがかりをつけ始めた。
ある日、H先輩がご祈祷の交代の為に神殿にやってきた。
タイミングとしては丁度御祈祷の片づけをする所で、次の申込もなかったので別に来なくてもいいような時だった。わざわざ来なくてもいいのにな~、と思っているとH先輩がつかつかと歩み寄り、
「ちょっといい?」
と私の手を引いて神殿のすぐ横の祭具倉庫へと導く。
え? 何だろう? H先輩に怒られるようなことした覚えないんだけどなー………。ある意味密室状態の中不安になる。
先輩は私の目をじっと見ながら切り出した。
「私がUさんと付き合っているのは知ってるよね?」
「え? あ、そーなんですか?」
(付き合っている? ん? 現在進行形? つーか別れたんじゃないの!?)
一体何を言いたいのかよく分からないまま、困惑しつつ適当に相槌をする私。その私の顔に右手を付き付け、何でか涙まで流しながら先輩が絶叫した………
右手には指輪が載っていた。
「Uさんは私のものなんだから!! 指輪だった貰ったのよ!? 横から手を出さないで!!!」
えええええええええっ!?
ちょっと待って!! 私がいつUさんに気のある素振をしたというの? 全く持って見に覚えがありません!
だいたい私はUさんのようなチャラチャラした軽い男は全く眼中にないです!正直仕事の際にも結構勝手な人だから、嫌いなんですけど。 それに私は自分より背の高い男も興味ないです。同じか低いくらいじゃないと気にもならないんですってば!!
心の中で抗弁しながら、勝手に盛り上がる先輩を何とか宥める。
「あのー、私Uさんのこと好きでも何でもないですよ? 勘違いです。だから落ち着いて下さい、ね?」
「うそよ………、昨日だって2人でずっと臨時宿直室にいたじゃない」
「お正月に向けて掃除してこいって課長に言われたからですよ。私は1階、Uさんは2階にいたから一緒にはいなかったんです。あとOさんも私と一緒に1階にいましたから、正確には3人です。聞いてみたらすぐに分かりますよ」
「本当に?」
「はい」
と、とりあえず疑いは晴れたらしい。
困った勘違いである。
面倒な人だと思いつつ、勿論このことは誰にも言わなかった。しかし、ある日後輩の子が言った。
「先輩聞いて下さいよぉ~」
「ん? 何?」
「さっきH先輩に言われたんですけど。『私はUさんと付き合ってるの! 指輪だって貰ってるの! 横からちょっかい出さないで!!』って。私チョービックリしましたよ~。付き合ってるなんて知らないし、Uさんにちょっかいなんて出してないっつーの。何を勘違いされたんでしょうね~? あれ、何固まってるんですか?」
「昨日言われたの?」
「え? そうですけど?」
「実はさ、私も半月くらい前に全く同じこと言われたんだけど。しかも神殿で」
「えええ!? マジですか!? しかも神殿で!?」
「そーだよ、マジだよ。そんな生臭いことを神殿でやっちゃったよ。しかも勘違いだし」
「面白いことになってますねー」
「ことあるごとに指輪見せながらそんなことしてるのかな。ってことはウチラ以外にもやられてたりしてね」
「あははは、まさかー」
こんな会話をしていたが、H先輩が退職後になって他にも同じことを言われていた人が2名、更にアルバイトの子まで5人もいたことが判明した。約10名にあらぬ疑いを持ち、詰め寄ったH先輩だったが、例の指輪はUさんに返さないままだったというので、今でも持っているのかも知れない。
続く。
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横で見ていても情緒不安定な傾向に拍車がかかりつつあった。H先輩の後輩は私を含めて3人。その3人に対する叱り方がヒステリックの度が過ぎるし、内容的にも八つ当たりにしか思えない。とうとう見るに見かねた普段は何も言わないような神主さんに「Hさん、あの言い方はいくらなんでもないんじゃない? 別に後輩の子が悪いわけじゃないでしょう?」と諌められる程。
それを機にヒステリー説教は収まったものの、今度は人がいないところで妙な言いがかりをつけ始めた。
ある日、H先輩がご祈祷の交代の為に神殿にやってきた。
タイミングとしては丁度御祈祷の片づけをする所で、次の申込もなかったので別に来なくてもいいような時だった。わざわざ来なくてもいいのにな~、と思っているとH先輩がつかつかと歩み寄り、
「ちょっといい?」
と私の手を引いて神殿のすぐ横の祭具倉庫へと導く。
え? 何だろう? H先輩に怒られるようなことした覚えないんだけどなー………。ある意味密室状態の中不安になる。
先輩は私の目をじっと見ながら切り出した。
「私がUさんと付き合っているのは知ってるよね?」
「え? あ、そーなんですか?」
(付き合っている? ん? 現在進行形? つーか別れたんじゃないの!?)
一体何を言いたいのかよく分からないまま、困惑しつつ適当に相槌をする私。その私の顔に右手を付き付け、何でか涙まで流しながら先輩が絶叫した………
右手には指輪が載っていた。
「Uさんは私のものなんだから!! 指輪だった貰ったのよ!? 横から手を出さないで!!!」
えええええええええっ!?
ちょっと待って!! 私がいつUさんに気のある素振をしたというの? 全く持って見に覚えがありません!
だいたい私はUさんのようなチャラチャラした軽い男は全く眼中にないです!正直仕事の際にも結構勝手な人だから、嫌いなんですけど。 それに私は自分より背の高い男も興味ないです。同じか低いくらいじゃないと気にもならないんですってば!!
心の中で抗弁しながら、勝手に盛り上がる先輩を何とか宥める。
「あのー、私Uさんのこと好きでも何でもないですよ? 勘違いです。だから落ち着いて下さい、ね?」
「うそよ………、昨日だって2人でずっと臨時宿直室にいたじゃない」
「お正月に向けて掃除してこいって課長に言われたからですよ。私は1階、Uさんは2階にいたから一緒にはいなかったんです。あとOさんも私と一緒に1階にいましたから、正確には3人です。聞いてみたらすぐに分かりますよ」
「本当に?」
「はい」
と、とりあえず疑いは晴れたらしい。
困った勘違いである。
面倒な人だと思いつつ、勿論このことは誰にも言わなかった。しかし、ある日後輩の子が言った。
「先輩聞いて下さいよぉ~」
「ん? 何?」
「さっきH先輩に言われたんですけど。『私はUさんと付き合ってるの! 指輪だって貰ってるの! 横からちょっかい出さないで!!』って。私チョービックリしましたよ~。付き合ってるなんて知らないし、Uさんにちょっかいなんて出してないっつーの。何を勘違いされたんでしょうね~? あれ、何固まってるんですか?」
「昨日言われたの?」
「え? そうですけど?」
「実はさ、私も半月くらい前に全く同じこと言われたんだけど。しかも神殿で」
「えええ!? マジですか!? しかも神殿で!?」
「そーだよ、マジだよ。そんな生臭いことを神殿でやっちゃったよ。しかも勘違いだし」
「面白いことになってますねー」
「ことあるごとに指輪見せながらそんなことしてるのかな。ってことはウチラ以外にもやられてたりしてね」
「あははは、まさかー」
こんな会話をしていたが、H先輩が退職後になって他にも同じことを言われていた人が2名、更にアルバイトの子まで5人もいたことが判明した。約10名にあらぬ疑いを持ち、詰め寄ったH先輩だったが、例の指輪はUさんに返さないままだったというので、今でも持っているのかも知れない。
続く。
人気ブログランキングへ ははは、まだまだこれから盛り上がりますよー。
私は大学の頃からバイトをし、卒業後は神社、そこからまた次の会社と年齢の割には幾つかの職場を経験しています。その中で、神社の巫女さん程円満に退職する率が低い職種を知りません。
基本的に円満退社ってないんじゃないかと思いました。
退職した巫女のうち事前にちゃんと話が付いていたのは、恐らく私だけでした。約80%は揉めた状態で無理矢理退職した感じです。
その80%の中でも史上最強クラスだったのが、H先輩でした。
このH先輩、非常に女らしいといえば女らしい性格でした。感情的で我儘で情緒不安定気味。躁鬱っぽくて焼餅焼き、自己中心的で自己主張も強い………。多彩なAさんに嫉妬しつつ、半ば追い出した人その1と言える先輩です。
まあそんな性格でした。一部の男性には受けるようですが、付き合おうものならのちのち面倒な事になるのは目に見えている………。何とか出来るのはよっぽど器の大きい人じゃないと駄目でしょう。
H先輩は富山出身。しかも結構な資産家の1人娘とあって、子供の頃から甘やかされて来たんだろうな………、と見ていて分かりました。常にブランドのバッグを携帯、一人暮らしだけれどそのマンション(2LDK、オートロックの高層マンション)の家賃・約12万円は親持ち。
稼いだ金は全部ブランド品と食費に消えていたらしい。
一見優雅に生活しているようなH先輩でしたが、仕事においては度々トラブルを起こしていました。
自己中で我が強ければそうなるのも当然。先輩や上司と喧嘩になったり、口論の末突然帰ってしまったりしました。帰宅しないまでも更衣室に籠もって泣き続けること2時間とか。そして2時間祈祷しっぱなしの私とか。
そんなかなり迷惑な(個人的には見ていて飽きなかったので楽しかった)H先輩が奉仕し始めて3年目の春が事の始まり。
神主さんのUさんと付き合い始めた。最初のうちはうまくいったらしいが、夏にはH先輩の我儘さにうんざりしたUさんから別れ話を切り出された。
しかしH先輩は了承せず、何度も電話を掛けたり家の前で待っていたりと、ストーカー化し始めた。Uさんは携帯では着信拒否に設定、家電話はナンバーディスプレイに変える等の対抗策に出た。
ここまで来るともはや復縁の可能性はないし、素直に別れを受け入れるしかないと思うのですが、H先輩はこう言ったらしい。
「私と別れるっていうなら、全部宮司さんに言ってやるから!!」
言ったら自分の方がヤバいんじゃないの?
とは思わなかったらしい。
揉めに揉めたものの、秋には別れた。
この別れを境に、誰も予想できなかった壮絶な退職騒動へと発展する。 ちなみに主に迷惑を被ったのは巫女で、特にH先輩のすぐ下で雑用全般を引き受けていた私だった。
続く
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基本的に円満退社ってないんじゃないかと思いました。
退職した巫女のうち事前にちゃんと話が付いていたのは、恐らく私だけでした。約80%は揉めた状態で無理矢理退職した感じです。
その80%の中でも史上最強クラスだったのが、H先輩でした。
このH先輩、非常に女らしいといえば女らしい性格でした。感情的で我儘で情緒不安定気味。躁鬱っぽくて焼餅焼き、自己中心的で自己主張も強い………。多彩なAさんに嫉妬しつつ、半ば追い出した人その1と言える先輩です。
まあそんな性格でした。一部の男性には受けるようですが、付き合おうものならのちのち面倒な事になるのは目に見えている………。何とか出来るのはよっぽど器の大きい人じゃないと駄目でしょう。
H先輩は富山出身。しかも結構な資産家の1人娘とあって、子供の頃から甘やかされて来たんだろうな………、と見ていて分かりました。常にブランドのバッグを携帯、一人暮らしだけれどそのマンション(2LDK、オートロックの高層マンション)の家賃・約12万円は親持ち。
稼いだ金は全部ブランド品と食費に消えていたらしい。
一見優雅に生活しているようなH先輩でしたが、仕事においては度々トラブルを起こしていました。
自己中で我が強ければそうなるのも当然。先輩や上司と喧嘩になったり、口論の末突然帰ってしまったりしました。帰宅しないまでも更衣室に籠もって泣き続けること2時間とか。そして2時間祈祷しっぱなしの私とか。
そんなかなり迷惑な(個人的には見ていて飽きなかったので楽しかった)H先輩が奉仕し始めて3年目の春が事の始まり。
神主さんのUさんと付き合い始めた。最初のうちはうまくいったらしいが、夏にはH先輩の我儘さにうんざりしたUさんから別れ話を切り出された。
しかしH先輩は了承せず、何度も電話を掛けたり家の前で待っていたりと、ストーカー化し始めた。Uさんは携帯では着信拒否に設定、家電話はナンバーディスプレイに変える等の対抗策に出た。
ここまで来るともはや復縁の可能性はないし、素直に別れを受け入れるしかないと思うのですが、H先輩はこう言ったらしい。
「私と別れるっていうなら、全部宮司さんに言ってやるから!!」
言ったら自分の方がヤバいんじゃないの?
とは思わなかったらしい。
揉めに揉めたものの、秋には別れた。
この別れを境に、誰も予想できなかった壮絶な退職騒動へと発展する。 ちなみに主に迷惑を被ったのは巫女で、特にH先輩のすぐ下で雑用全般を引き受けていた私だった。
続く
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色々な技能を持っていたAさん。結局1年で退職しました。
先輩に妬まれてやり難かったのが半分、残り半分はやっぱり神職になりたい!!っていうのが多かったようです。巫女では物足りなかったんでしょう。
せっかく大学に入って資格取ったのに、祈祷も出来ないし、祝詞を書くこともない。
頑張った4年間は何だったのか………と思うのも当然でしょうか。
あとは講習会に行けなかったのが問題だったようです。
卒業時に貰える資格は正階ですが、規定の講習会に行けば明階に昇格できます。これは卒業後5年以内に必要な講習会に出席しないといけません。
1年目では1度も講習会に行かせてもらえなかった(神職さん優先だから)ことに危機感を覚えたのもあるようです。
有給使って(というか希望休)自腹で講習費出してでも行きたかったようですが、神社に認めてもらえなくて殆ど行けず。
Aさんはあらゆる伝を頼り、小さい神社ですが奉職先を見つけて退職と同時に神主さんになりました。
今でも何処かで神主さんしているのかも知れません。
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先輩に妬まれてやり難かったのが半分、残り半分はやっぱり神職になりたい!!っていうのが多かったようです。巫女では物足りなかったんでしょう。
せっかく大学に入って資格取ったのに、祈祷も出来ないし、祝詞を書くこともない。
頑張った4年間は何だったのか………と思うのも当然でしょうか。
あとは講習会に行けなかったのが問題だったようです。
卒業時に貰える資格は正階ですが、規定の講習会に行けば明階に昇格できます。これは卒業後5年以内に必要な講習会に出席しないといけません。
1年目では1度も講習会に行かせてもらえなかった(神職さん優先だから)ことに危機感を覚えたのもあるようです。
有給使って(というか希望休)自腹で講習費出してでも行きたかったようですが、神社に認めてもらえなくて殆ど行けず。
Aさんはあらゆる伝を頼り、小さい神社ですが奉職先を見つけて退職と同時に神主さんになりました。
今でも何処かで神主さんしているのかも知れません。
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