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神職の資格を取ったものの、神職として奉仕させてくれる神社がなく、かろうじて巫女でなら雇ってくれる神社を見つけ、そこで4年間奉仕ししていました。
今は普通の仕事をしていますが、当時を振り返り注目度が高い?巫女の実情を嘘偽りなくお話します。
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巫女をやっていてあの日程胃が痛かった日はないと思う。課長に怒鳴られようが何しようがいちいち気にしなかった(そうでないと身が持たないんですよ)私ですが、直接自分は関係ないものの身が縮む思いでした。
それは1年でもっとも忙しい正月のある日のことだった。巫女がそれぞれの持ち場へと振り分けられいた。受付、案内、祈祷補佐、舞姫、お神酒所、会計所、社務所、授与所………という具合で10人程の巫女が各所へと散らばった。
私はその日お神酒所担当だった。
お神酒用の日本酒の残数を確認した所、今日1日持つか微妙な本数だったので、朝のうちに補充することにした。バイトの巫女ちゃん(毎年kきてくれるベテラン)に留守番を頼み、倉庫へ向かう。
普段なら境内を突っ切って行くほうが早いのだが、正月で混雑しているので社務所を通った方が早い。
まだ朝9時頃だったので社務所はのんびりした空気………のはずだったのだが、玄関を開けた途端に響いてきたのは課長の怒りマックスの怒鳴り声だった。
「もういい! お前帰れ!!」
流石神主さんよく声が通る………なんて感心してる場合じゃないよな。恐る恐る社務所の戸を開けると、血管の浮いた赤い顔に凶眼を光らせた課長の姿。周囲では困惑しつつ凍りついたバイトの巫女さんと、同様に凍りついた社務所係りの神主さんたち。
抜き足差し足中に入ると、社務所係りだったはずのH先輩の姿がない。やっぱり彼女が何かしでかしたのか!?
フピーフピーと鼻息荒い課長がキッと私の顔を睨みながら、
「H帰るから。ほっといていいぞ!」
「え? へぇ!? 帰るってこれからですか? 具合悪いんですか?」
「あいつの頭は昔から具合おかしいんだよ! この忙しいのに社務所係りがイヤなんだとさ。どうしても舞姫か祈祷補助がいいとか抜かしやがった。『駄目なら帰ります!!』とか言いやがったから『帰れ!!』って言ってやったよ。フン、いい年して何考えてるんだろうなあ」
「………じゃあ社務所は誰が?」
「しょうがないから神主だけで何とかするよ。他の場所も空には出来ないからな! あ~っ本当にムカつくなあ新年早々!!」
おいおいこんな事アリかよ? 本気で帰るつもりか? もう今日でさようならの勢いだぞ?
とりあえずお酒を1ケース持ってきてから、先輩がいるであろう更衣室に飛び込む。
「H先輩!?」
「あ、瑞穂さん。私帰るから」
泣きながら言う先輩。
「先輩、落ち着いて下さい。帰ってどうするんですか。こんな忙しい日に帰ったりしたら、もうここには来れなくなっちゃいますよ!? いいんですか?」
「だって、巫女の仕事は舞姫か祈祷でしょ? 何で私が社務所で受付なんてしなくちゃいけないの? 後輩の子達ばっかり舞姫やってるし」
「1年目で社務所とかイレギュラーな事が多い場所は任せられないからですよ。人前で舞う経験を積む為でもありますし、トイレに行くのもままならない程過酷だし。社務所や会計はある程度経験のある人じゃないと」
「私だって舞姫は1回しかしていないのに………ズルイよ」
こっ、この人はもう………!!
ああ、駄目だ私じゃどうにもならん。上層部の先輩召還だ!
お酒のケースをお神酒所に放り込み、まだ混み具合が大したことないことを確認し、バイトちゃんにもうちょっと1人でお願いする。
「何かあったら携帯に掛けて!」
職員用の携帯を掴んで、会計所にいたトップの先輩・Fさんの元へと疾走。ただならぬ気配を感じたらしい先輩が、
「瑞穂、どうした!?」
「かくかくしかじかで、H先輩が課長と一戦やらかして、社務所係りを放棄して帰ろうとしています。今更衣室で着替えています、止めて下さい!」
「うそでしょ!? そんなの聞いたことないってば」
会計所を離れるわけにも行かないF先輩は慌てて内線電話を掛ける。
10分にわたる交渉の末、とうとう彼女を止める事は出来ず、9時27分に帰宅したのだった。
あああああ、今日はみんな21時くらいまで働かなきゃならないというのに、何考えてんだよぉぉぉぉぉ。人手もギリギリだっちゅーのにぃぃいぃぃ。
とりあえず内線でH先輩職場放棄を連絡。巫女達の悲鳴が聞こえた。
ああ、さようならH先輩。もう来ないっつーか来れないですよね………。
お神酒所でお神酒を注ぎつつ、暗澹たる思いに胸中を支配された1日だった。
こんな騒動を起こしたH先輩だったが、翌日はごく普通に出勤して来たことにビックリだった。悪びれた様子は全くなく、むしろ晴れ晴れとした明るい顔で、
「おっはようゴザイマ~ス!!」
と元気よく更衣室に入ってきた。その時の先輩達の表情は、見事に固まっていた。言いたいことは色々あったと思うけど、もう諦観していたのか誰も何も言わなかった、というか言えなかった。
勿論私も何も言えなかった………
よく来れたな………とその神経の太さに感心しただけだった。
まだ続くよ。
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それは1年でもっとも忙しい正月のある日のことだった。巫女がそれぞれの持ち場へと振り分けられいた。受付、案内、祈祷補佐、舞姫、お神酒所、会計所、社務所、授与所………という具合で10人程の巫女が各所へと散らばった。
私はその日お神酒所担当だった。
お神酒用の日本酒の残数を確認した所、今日1日持つか微妙な本数だったので、朝のうちに補充することにした。バイトの巫女ちゃん(毎年kきてくれるベテラン)に留守番を頼み、倉庫へ向かう。
普段なら境内を突っ切って行くほうが早いのだが、正月で混雑しているので社務所を通った方が早い。
まだ朝9時頃だったので社務所はのんびりした空気………のはずだったのだが、玄関を開けた途端に響いてきたのは課長の怒りマックスの怒鳴り声だった。
「もういい! お前帰れ!!」
流石神主さんよく声が通る………なんて感心してる場合じゃないよな。恐る恐る社務所の戸を開けると、血管の浮いた赤い顔に凶眼を光らせた課長の姿。周囲では困惑しつつ凍りついたバイトの巫女さんと、同様に凍りついた社務所係りの神主さんたち。
抜き足差し足中に入ると、社務所係りだったはずのH先輩の姿がない。やっぱり彼女が何かしでかしたのか!?
フピーフピーと鼻息荒い課長がキッと私の顔を睨みながら、
「H帰るから。ほっといていいぞ!」
「え? へぇ!? 帰るってこれからですか? 具合悪いんですか?」
「あいつの頭は昔から具合おかしいんだよ! この忙しいのに社務所係りがイヤなんだとさ。どうしても舞姫か祈祷補助がいいとか抜かしやがった。『駄目なら帰ります!!』とか言いやがったから『帰れ!!』って言ってやったよ。フン、いい年して何考えてるんだろうなあ」
「………じゃあ社務所は誰が?」
「しょうがないから神主だけで何とかするよ。他の場所も空には出来ないからな! あ~っ本当にムカつくなあ新年早々!!」
おいおいこんな事アリかよ? 本気で帰るつもりか? もう今日でさようならの勢いだぞ?
とりあえずお酒を1ケース持ってきてから、先輩がいるであろう更衣室に飛び込む。
「H先輩!?」
「あ、瑞穂さん。私帰るから」
泣きながら言う先輩。
「先輩、落ち着いて下さい。帰ってどうするんですか。こんな忙しい日に帰ったりしたら、もうここには来れなくなっちゃいますよ!? いいんですか?」
「だって、巫女の仕事は舞姫か祈祷でしょ? 何で私が社務所で受付なんてしなくちゃいけないの? 後輩の子達ばっかり舞姫やってるし」
「1年目で社務所とかイレギュラーな事が多い場所は任せられないからですよ。人前で舞う経験を積む為でもありますし、トイレに行くのもままならない程過酷だし。社務所や会計はある程度経験のある人じゃないと」
「私だって舞姫は1回しかしていないのに………ズルイよ」
こっ、この人はもう………!!
ああ、駄目だ私じゃどうにもならん。上層部の先輩召還だ!
お酒のケースをお神酒所に放り込み、まだ混み具合が大したことないことを確認し、バイトちゃんにもうちょっと1人でお願いする。
「何かあったら携帯に掛けて!」
職員用の携帯を掴んで、会計所にいたトップの先輩・Fさんの元へと疾走。ただならぬ気配を感じたらしい先輩が、
「瑞穂、どうした!?」
「かくかくしかじかで、H先輩が課長と一戦やらかして、社務所係りを放棄して帰ろうとしています。今更衣室で着替えています、止めて下さい!」
「うそでしょ!? そんなの聞いたことないってば」
会計所を離れるわけにも行かないF先輩は慌てて内線電話を掛ける。
10分にわたる交渉の末、とうとう彼女を止める事は出来ず、9時27分に帰宅したのだった。
あああああ、今日はみんな21時くらいまで働かなきゃならないというのに、何考えてんだよぉぉぉぉぉ。人手もギリギリだっちゅーのにぃぃいぃぃ。
とりあえず内線でH先輩職場放棄を連絡。巫女達の悲鳴が聞こえた。
ああ、さようならH先輩。もう来ないっつーか来れないですよね………。
お神酒所でお神酒を注ぎつつ、暗澹たる思いに胸中を支配された1日だった。
こんな騒動を起こしたH先輩だったが、翌日はごく普通に出勤して来たことにビックリだった。悪びれた様子は全くなく、むしろ晴れ晴れとした明るい顔で、
「おっはようゴザイマ~ス!!」
と元気よく更衣室に入ってきた。その時の先輩達の表情は、見事に固まっていた。言いたいことは色々あったと思うけど、もう諦観していたのか誰も何も言わなかった、というか言えなかった。
勿論私も何も言えなかった………
よく来れたな………とその神経の太さに感心しただけだった。
まだ続くよ。
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